伊藤研究室が取り組む「可視化」という研究分野は、科学技術に関する幅広い問題に対して、長きにわたって貢献してきました。
このページでは、可視化に関する伊藤研究室の研究テーマで、科学技術問題に深く関係があるものを紹介します。
蛋白質に限らず化学反応の多くは、分子の表面形状に深い関係があることが最近わかっています。
この関係を分析することで、例えば新しい薬品の開発や、病原の解明などに貢献できる可能性がある、と言われています。
上の図は、私達が提案する PROTEIN (Partial Relief Observation TEchnique and INterface)
によって、蛋白質の表面形状から凸部と凹部を抽出し、類似形状をグループ化して、
その化学的性質を分析した結果を表わしています。
このような技術によって抽出された類似形状を分析することで、
蛋白質の表面形状と化学的現象の相関性を究明し、多くの問題の解決に貢献できる可能性があると考えています。
下の図は、蛋白質の表面形状から、薬物と反応する可能性の高い、大きめの凹部(ポケット)を抽出した結果を、青く表示したものです。
蛋白質の表面周囲に分布する小さな球体群は、蛋白質と反応しやすい位置に見られる非蛋白質分子です。
この球体が集中する部位がちょうど青く表示されていることから、ポケット抽出は蛋白質の反応分析に有用であることが示唆されます。
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K. Nishiyama, T. Itoh,
PROTEIN: A Visual Interface for Classification of Partial Reliefs of Protein Molecular Surfaces,
The Institute of Image Electronics Engineering of Japan, Vol. 37, No. 3, pp. 181-188, 2008.
(PDF)
- Y. Nakamura, T. Itoh, Fast Detection and Visualization of Protein
Surface Pockets for Drug Design, The 11th Asian Symposium on
Visualization, 2011.
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金子, 中村, 伊藤,
蛋白質ポケットのdruggability分析のための可視化ツール,
芸術科学会論文誌, Vol. 12, No. 3, pp. 104-113, 2013.
(PDF)
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M. Miyoshi, T. Itoh, K. Yura,
A Scatterplot-Based Visual Analytics Tool for Protein Pocket Properties,
Cyberworlds 2013, Poster Session, 2013.
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薬物開発の分野では、これから新しく開発する薬物の実験結果を予測することが、
開発期間短縮などの目的で重要であるとされています。
この図は、「十二単ビュー」
という可視化手法を用いて、製薬企業等が扱う大量の薬物データを可視化した例です。
大量の薬物が分子構造でグループ化され、その実験結果で色分けされています。
上の図のような可視化は、
「もし同じグループに属する薬物が、みんな同じ色で表示されていたら、
これから新しく開発する薬物についても、実験結果は同じかもしれない。」
というような予測に貢献できると考えられます。
この研究成果は既に、薬物の研究現場にて使用されています。
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山澤, 伊藤, 山下, 十二単ビュー:階層型多変数データの可視化と詳細度制御の一手法,
芸術科学会論文誌, Vol. 7, No. 2, pp. 85-96, 2008.
(PDF)
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M. Yamazawa, T. Itoh, F. Yamashita,
Visualization and Level-of-Detail Control for Multi-Dimensional Bioactive Chemical Data,
12th International Conference on Information Visualization (IV08),
pp. 11-16, 2008.
(PDF)
- F. Yamashita, H. Hara, T. Itoh, M. Hashida,
Novel Hierarchical Classification and Visualization Method for Multiobjective Optimization of Drug Properties: Application to Structure-Activity Relationship Analysis of Cytochrome P450 Metabolism,
Journal of Chemical Information and Modeling, Vol. 48, No. 2, pp. 364-349, 2008.
- F. Yamashita, T. Itoh, H. Hara, M. Hashida,
Visualization of Large-Scale Aqueous Solubility Data Using a Novel Hierarchical Data Visualization Technique, Journal of Chemical Information and Modeling,
Vol. 46, No. 3, pp. 1054-1059, 2006.
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生物には数千〜数万の遺伝子があります。その個々の遺伝子の機能を解明することで、
新しい薬の開発や、病原の解明、また生物の進化過程の解明、などへの貢献が可能であると言われています。
上の図は、そんな数千単位の遺伝子を、機能分析のための実験結果で分類し、さらに「異なる分類に属するにもかかわらず関係の深い遺伝子」をネットワーク化した可視化結果です。
下の図は、同じく数千単位の遺伝子を、機能分析のための実験結果における特徴で色をつけ、さらに「相互作用」という関係を有する遺伝子間を線で結んでネットワーク化した可視化結果です。
このように可視化技術を用いることで、遺伝子分析の分野においても、一定の貢献ができるものと期待されます。
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- 西山, 伊藤, 「平安京ビュー」を用いた階層型遺伝子ネットワークの可視化,
芸術科学会論文誌, Vol. 6, No. 3, pp. 106-116, 2007.
(PDF)
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T. Itoh, C. Muelder, K.-L. Ma, J. Sese,
A Hybrid Space-Filling and Force-Directed Layout Method for Visualizing Multiple-Category Graphs,
IEEE Pacific Visualization Symposium, 2009.
(PDF)
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R. Nakazawa, T. Itoh, J. Sese, A. Terada,
Integrated Visualization of Gene Network and Ontology Applying a Hierarchical Graph Visualization Technique,
16th International Conference on Information Visualisation (IV2012), pp. 81-86, 2012.
(PDF)
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自動車や航空機などの設計過程において、流体力学に基づく安全性や性能の
解析は非常に重要です。特に、実験に基づく流体力学(EFD)と、計算に
基づく流体力学(CFD)はその二大技術として活用されています。両者には
一長一短の関係があり、最近では両者を融合した解析技術の開発も進められ
ています。
この図は航空機周りの気圧と流速に関するEFDとCFDの結果を比較するための
可視化結果です。我々はEFDとCFDの融合可視化技術の研究開発を進めることで、
流体力学に基づく解析技術への一助を目指そうとしています。
なお本研究は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究によるものです。
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K. Hattanda, T. Itoh, S. Watanabe, S. Kuchi-ishi, K. Yasue,
A Flow Representation for EFD/CFD Integrated Visualization,
NICOGRAPH International 2012.
(PDF)
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伊藤, 八反田, 渡辺, 口石, 保江,
EFD/CFD融合可視化に関する基礎検討(第2報),
第44回流体力学講演会/航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム
「EFD/CFD融合技術」特別セッション, 2A14, 2012.
(PDF)
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計算機シミュレーションの中には、自然現象の解明や、工業製品の設計を目的としたものが多くあります。
そしてその中には、空気や水などの流体の動きをシミュレートしたものが多数あり、これらの可視化技術は長年にわたって研究が続けられています。
この図は、気象現象を解明するためのシミュレーションとして、
高気圧や低気圧などの気圧分布と、風の流れを、3次元的に表示したものです。
このような3次元的な可視化手法によって、気象現象に限らず、
多くの自然現象の解明に貢献できるものと考えられます。
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S. Furuya, T. Itoh,
A Streamline Selection Technique for Integrated Scalar and Vector Visualization,
IEEE Visualization, Poster Session, 2008.
(PDF)
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古矢, 伊藤,
スカラ場・ベクタ場同時可視化のための流線自動生成の一手法,
芸術科学会論文誌, Vol. 8, No. 3, pp. 120-129, 2009.
(PDF)
- M. Hirano, T. Itoh, S. Shirayama,
Numerical Visualization by Rapid Isosurface Extractions Using 3D Span Spaces,
Journal of Visualization, Vol. 11, 2008.
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原子力発電所には数百、数千もの計器(例えば温度計、圧力計、速度計)があり、
厳しい安全管理のもとで運転されています。
このような大量の計測情報を一望し、異常を早期発見するためにも、
可視化技術は有効であると考えられます。
この図は、原子力発電所の計測情報を一覧表示した例です。
左側の縦長のウィンドウでは、「今昔物語」 という可視化技術を用いて、
原子力発電所の計測情報の時間変化を要約的に表示しています。
この可視化技術によって、計測情報に異常が発生した時刻を見つけやすくします。
そして右側のウィンドウでは、数百個単位の計測情報の各々を表示します。
このような可視化技術によって、計測情報の異常の早期発見が期待できると考えられます。
なお本内容は、電源開発促進対策特別会計法に基づく文部科学省からの受託事業として、
お茶の水女子大学が実施した
「原子力システム管理技術の大規模情報可視化に関する研究開発」の成果の一部です。
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T. Itoh, S. Furuya, H. Ohshima, K. Okamoto,
Hierarchical Data Visualization for Atomic Plant Data,
Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 3, No. 4, 2008.
(PDF)
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伊藤, 大島, 岡本,
平安京ビューを用いた原子炉プラントシミュレーションの可視化,
第27回日本シミュレーション学会大会, 2008.
(PDF)
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ここまで紹介した科学技術の問題の中には、時間変化を伴うものが多くあります。
例えば原子力発電所の計測情報、遺伝子の実験結果、気象シミュレーションの結果などは、
温度や気圧などの物理量の時間変化を算出することで、その科学的メカニズムを追求するものです。
よって、この時間変化を可視化によって理解することには、多くの利益があると考えます。
この図は、 FRUITS Time という技術を用いて、大量の時間変化データを折れ線グラフとして一覧し、その代表的なものだけを選択的に表示した例です。
このように時間変化データから代表的なものを選択的に可視化することで、ユーザはデータの中から特徴的な現象を容易に発見できるようになると考えられます。
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Y. Uchida, T. Itoh,
A Visualization and Level-of-Detail Control Techniquefor Large Scale Time Series Data,
13th International Conference on Information Visualisation (IV09),
pp. 80-85, 2009.
(PDF)
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内田, 伊藤, 大規模時系列データの可視化と対話的な詳細度制御の一手法,
芸術科学会論文誌, Vol. 8, No. 2, pp. 108-119, 2009.
(PDF)
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M. Imoto, T. Itoh,
A 3D Visualization Technique for Large Scale Time-Varying Data,
14th International Conference on Information Visualisation (IV10), 2010.
(PDF)
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井元, 伊藤,
SAX法による局所パターン抽出を導入した時系列データの三次元可視化の一手法,
芸術科学会論文誌, Vol. 10, No. 3, pp. 179-191, 2011.
(PDF)
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S. Yagi, Y. Uchida, T. Itoh,
A Polyline-Based Visualization Technique for Tagged Time-Varying Data,
16th International Conference on Information Visualisation (IV2012), pp. 106-111, 2012.
(PDF)
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科学技術シミュレーションの中には、適切な解を発見するために大量の試行錯誤を要するものも多数あります。
逆にいえば、その試行錯誤の過程で最適な入力数値(パラメータ)を発見することが、科学技術シミュレーションを成功させる上で重要なプロセスとなります。
このプロセスには「最適化問題」と呼ばれる技術がよく用いられます。有名な技術の例として、遺伝的アルゴリズムが知られています。
遺伝的アルゴリズムが有効に活用された一例として、新幹線のぞみの車体形状シミュレーションの最適化が知られています。
私達は最適化問題の進化過程や解分布を可視化することで、科学技術シミュレーションをはじめとする多くの問題に対して、人間の意思決定を介在しながら問題の意図にあった解を見つけるための対話操作環境について模索をしています。
その題材として、心筋細胞シミュレーションの最適化や、航空機の翼形状の設計最適化などに取り組んでいます。
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- K. Ohyama, T. Itoh, F. Yamashita, K. Koyamada,
EMACI: A Visual Interface of Multi-Parameters for Interactive Evolutionary Algorithm,
IIEEJ Image Electronics and Visual Computing Workshop, 2007.
(PDF)
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M. Kubota, T. Itoh, S. Obayashi, Y. Takeshima,
EVOLVE: A Linked Visualization Environment for Explanatory Variables and Objective Function of Optimization Problems,
Cyberworlds 2013, Poster Session, 2013.
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