画像処理やコンピュータグラフィックスなどのコンテンツ制作技術を、コンピュータに精通していない一般の人にも使えるようにしよう、という機運が最近高まっています。 このページでは、伊藤研究室の研究テーマのうち、コンテンツ制作の道具として使える技術について紹介します。

 




化粧は自分自身をプロデュースする有力な手段です。 女子大学にて研究を進める我々にとって、 計算機科学による化粧の支援という研究テーマは、 女子大学の個性を発揮する上でも重要な研究テーマといえます。 我々はこの研究テーマに対して、以下の2つの試みを始めています。
  • 化粧の効果を3次元CGで再現するためのモデリング
  • 化粧に対する印象評価結果の一覧可視化
下の図は、化粧に対する印象評価結果を、 画像一覧可視化ブラウザCATを用いて表示した結果です。 この可視化結果から、2つの評価結果(この図の場合、男性・女性別の評価結果) と化粧条件や被写体条件との相関性を一望することができ、 結果として化粧に対する一種の推薦システムとして利用が可能になると考えられます。
上の図は、皮膚の微視構造を3次元的にモデリングした例です。 CG映像制作を目的とした人体再現手法の多くと異なり、 この手法では毛穴、皮丘といった微視構造をパラメータとして皮膚を再現しています。 これによって、さまざまな状態の皮膚の再現が容易になり、 ひいてはその印象評価も容易になると期待しています。 また将来的には、化粧水やファンデーションなどの微視構造への効果をモデリングする、 といった応用も考えられます。
  • F. Banba, T. Itoh, M. Inomata, M. Kurokawa, N. Toyoda, H. Otaka, H. Sasamoto, Micro-Geometric Skin Simulation for Face Impression Analysis, 芸術科学会論文誌, Vol. 13, No. 1, pp. 11-20, 2014. (PDF)
  • 野村, 伊藤, 山口, 画像ブラウザ「CAT」を用いた化粧の印象効果分析結果の可視化, 可視化情報学会可視化情報シンポジウム, 2009. (PDF)

 

SNSでのアイコンやスタンプに代表されるように、オンラインコミュニケーションのコンテンツとしてオリジナルの似顔絵を利用する機会が増えています。そこで我々は、オリジナルの似顔絵を自動生成する一手法に取り組んでいます。
似顔絵をコンピュータで作成する手法はさまざまですが、この研究では、あらかじめ用意された顔の各パーツのサンプルイラストを組み合わせて似顔絵を作成する手法を採用しています。 本研究では、あらかじめ用意された顔の各パーツのイラストを、モーフィング技術で自在に変形し、顔の特徴を再現するパーツを生成します(上図)。これにより、既存パーツに依存せずに、さまざまな形状のパーツが生成でき、幅広い似顔絵の表現が可能となります。

また、コンピュータで顔の特徴を自動算出し、自動的に似顔絵を作成するプログラムに加えて、インタラクティブにパーツのモーフィングを調整できるユーザインタフェースを開発しました(下図)。

  • 小松, 伊藤, パーツ単位のモーフィングによる似顔絵生成, 芸術科学会論文誌, Vol. 14, No. 5, pp. 180-187, 2015. (PDF)

 

3次元CG技術はアニメやゲームなどを通して、さまざまな形で私達の日常生活で目にする存在となりました。 しかし、その3次元CGのキャラクタ自体を私達がデザインするのは簡単ではありません。 そこで3次元CGをもっと私達自身で楽しむために必要な技術として、3次元CGのキャラクタを手軽に作成できる技術があげられるかと思います。
この図は、ヒートカッターという電熱線のような工具で、発泡スチロールのような柔らかい物体を切る操作を模倣したものです。 このような操作性で形状を作成するCG技術により、3次元CGのキャラクタをより短時間で作成できるのではないか、と考えています。 私達はこの技術をIgel と名付けました。 Igelとはドイツ語でハリネズミを意味し、この技術で作成したいキャラクタの一例を表わしています。 またIgelという単語には、「Interactive Graphics Enabling Light-modeling」という意味もかけています。

 

画像とCGの合成、という技術は既に多くの目的で普及しています。 映画やアニメ、ゲームなどの映像技術で多用されているのはご存知かと思いますが、 工業製品(例えば自動車、建築、電気製品)のビジュアルシミュレーションやパンフレット作成の目的でも、未完成の製品をCGで表現し、それを背景画像に合成する、といった工程がよく用いられます。
本研究室では、画像とCGの合成に関する研究のうち、 以下のような問題に取り組んできました。

一つ目は、スタンドライトのような近接照明を含むシーンの自然な表現です。 このシーンは、CGで作成したマグカップと、実写画像の合成によって作成されています。 スタンドライトがつくるマグカップの影を自然に合成できているのがわかるかと思います。

二つ目は、CGで表現された気象現象(本研究では虹)の、実写画像への合成です。 このシーンでは現実の照明条件や観察位置を考慮し、実写画像に写る物体の奥行きを考慮することで、できるだけ現実に出現しうる虹を再現しています。

 

デジタルカメラの普及にともない、個人が大量のデジタル画像を保有するようになりましたが、 そのわりにデジタル画像の編集や加工の技術は誰にでも身近なものとは言い切れません。 その大きな理由として、デジタル画像の編集や加工には高級なソフトウェアが必要であり、 それを操作するには専門用語の理解が必要であり、 結果として初心者には敷居が高いと思われがちである、という点が挙げられます。
それを解決するための試みとして我々は、 サンプル画像の手動グループ化という直観的操作に基づいた、 画像処理ユーザインタフェースの一手法を開発しています。 この手法では前処理として、サンプル画像の中から似ていると感じる画像群を、 ユーザにグループ化してもらいます。 続いて、このグループ化結果からサンプル画像処理を導き出し、 ユーザにはサンプル画像処理の一つを選択してもらうことで画像処理を実現します。 我々自身によるユーザ評価により、本手法には好意的な結果が認められています。