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【シミュレーション結果の可視化(理学部情報科学科 伊藤研究室)】

各種のシミュレーション結果から見られる複雑で潜在的な現象を直感的に理解するための有効な手段として、コンピュータによる 情報の「可視化」という技術が研究されてきました。
私たちは当センターの設立前から、シミュレーション結果の可視化 についての研究に取り組んできました。
本ページでは、そのいくつかを紹介いたします。



自動車や航空機などの設計過程において、流体力学に基づく安全性や性能の 解析は非常に重要です。特に、実験に基づく流体力学(EFD)と、計算に 基づく流体力学(CFD)はその二大技術として活用されています。両者には 一長一短の関係があり、最近では両者を融合した解析技術の開発も進められ ています。 この図は航空機周りの気圧と流速に関するEFDとCFDの結果を比較するための 可視化結果です。我々はEFDとCFDの融合可視化技術の研究開発を進めることで、 流体力学に基づく解析技術への一助を目指そうとしています。 なお本研究は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究によるものです。




原子力発電所には数百、数千もの計器(例えば温度計、圧力計、速度計)があり、 厳しい安全管理のもとで運転されています。 このような大量の計測情報を一望し、異常を早期発見するためにも、 可視化技術は有効であると考えられます。
この図は、原子力発電所の計測情報を一覧表示した例です。 左側の縦長のウィンドウでは、「今昔物語」 という可視化技術を用いて、 原子力発電所の計測情報の時間変化を要約的に表示しています。 この可視化技術によって、計測情報に異常が発生した時刻を見つけやすくします。 そして右側のウィンドウでは、数百個単位の計測情報の各々を表示します。 このような可視化技術によって、計測情報の異常の早期発見が期待できると考えられます。
なお本内容は、電源開発促進対策特別会計法に基づく文部科学省からの受託事業として、 お茶の水女子大学が実施した 「原子力システム管理技術の大規模情報可視化に関する研究開発」の成果の一部です。




薬物開発の分野では、これから新しく開発する薬物の実験結果を予測することが、 開発期間短縮などの目的で重要であるとされています。
この図は、「十二単ビュー」 という可視化手法を用いて、製薬企業等が扱う大量の薬物データを可視化した例です。 大量の薬物が分子構造でグループ化され、その実験結果で色分けされています。
上の図のような可視化は、 「もし同じグループに属する薬物が、みんな同じ色で表示されていたら、 これから新しく開発する薬物についても、実験結果は同じかもしれない。」 というような予測に貢献できると考えられます。 この研究成果は既に、薬物の研究現場にて使用されています。




科学技術シミュレーションの中には、適切な解を発見するために大量の試行錯誤を要するものも多数あります。 逆にいえば、その試行錯誤の過程で最適な入力数値(パラメータ)を発見することが、科学技術シミュレーションを成功させる上で重要なプロセスとなります。 このプロセスには「最適化問題」と呼ばれる技術がよく用いられます。有名な技術の例として、遺伝的アルゴリズムが知られています。 遺伝的アルゴリズムが有効に活用された一例として、新幹線のぞみの車体形状シミュレーションの最適化が知られています。
この図は、遺伝的アルゴリズムを成功させるために、その計算の過程を可視化した EMACI (Evolutional Multi-parameter Analysis and Control Interface) による表示結果を示しています。 私達は、この可視化結果を眺めながら、動的に遺伝的アルゴリズムの設定を変更することで、高い確率でシミュレーションが成功することを実証しました。 この実験の具体的な題材として、我々は心筋細胞シミュレーションを用いました。




情報可視化技術は災害の分析や警告にも有効な技術であると考えられます。 例えば河川の増水などによる水害を考えると、天候にまつわる降水量などの 数値と、その結果として現れる河川水位などの数値の相関性を複合的に 観察することで、過去の水害の原因究明や、未来の水害の予測や防止に 貢献できると考えられます。 そこで私達は、地図上に降水量や河川水位などの情報をうまく配置し、 広域にわたる情報を一覧する際にも重要な数値変化を見逃さないように 工夫した可視化技術を開発いたしました。 なお本研究は、東芝デザインセンター様との共同研究によるものです。




クレジットカードの盗難や偽造、およびそれに伴う不正利用は、深刻な社会問題となっています。 特に近年では、スキミングなどの技術を用いた巧妙な不正利用が多く、その被害を最小限に食い止める技術の確立が望まれています。
この図は、クレジットカードの不正利用履歴の分布を可視化したものです。 現在ではクレジットカード関連企業の多くが、不正利用かもしれない不自然な購買に対して、警告を発するシステムを運用しています。 このシステムが検知した不正利用を分析すると、不正の発生した時間帯や商品、販売店などには一定の相関性があることがわかっています。 この可視化の研究は、クレジットカードの不正利用にしばしば見られる手口を確認し、 その手口を有効に検出するためのルール作りに貢献できると考えられます。
なお本研究は、インテリジェントウェイブ社との共同研究によるものです。

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