プロジェクト

【放射性汚染食品等の均一性が定量結果に及ぼす影響のシミュレーション:
                           実測との比較検討(古田悦子・鈴木恵美子)】

目的

東京電力福島第一原子力発電所事故以後、非専門家である多くの人々が、放出されたガンマ線放出核種の測定に携わることになりました。 正確な測定のために、多くの高純度ゲルマニウム検出器(HPGe)が導入されました。 従来HPGe測定に必要不可欠とされてきた均一性のある試料調整法を守り、膨大な数の試料を抱えながら、測定が追い付かない状態が続いています。 正確な測定のためのメカニズムとしては試料に均一性は必要ですが、どの程度の均一性が必要かは議論されていませんでした。 そこで、試料の不均一性が放射能測定に及ぼす影響をシミュレーションし、実測との誤差を求めることを目的としました。



目的の達成

① 試料をU8容器に詰めて測定する場合、実測とシミュレーションでは最大1.4倍程度ありました。
② シミュレーションにより、極端な局在があった場合でも評価が可能であることを示すことができました。
③ 試料を1cm厚さまで刻めば、160%程度の過大・過小評価の可能性がありました。
④ 試料を1cm角まで刻めば、7%程度の過大・過小評価の可能性がありました。
すなわち、1cm角程度に刻めば、試料の評価には充分でした。




方法

HPGe用試料容器として、U8(4.75φ×5cm)を用いました。対象核種は137Cs(ガンマ線エネルギー;662keV)としました。

① 試料を正確に1cm角に切り分け、その一部から半分が汚染しているとするシミュレーションを行いました。このために、効率校正ソフトLabSOCS (Canberra社)を用いました。
② 実測用として1cm角のサイコロに1mmφ×5mmの穴をあけ、サイコロ中央に137Cs溶液を5μL滴下後、接着剤を用いて蓋をしました。非放射性のサイコロと組み合わせ、種々のパターンについて実測しました。




結果

グラフはシミュレーション化した場合の実測との差を示しています。 グラフ下部に示した図の赤い部分が放射性であるとした場合です。 試料の全面に均等な場合を除き、置き方により過大・過小評価となるものの、実測とシミュレーションの差は少なくなりました。 この結果から、食品を刻まずに測定した場合は、(100Bq/kg)/440%=23Bq/kgを超える値があった場合には、上下を入れ替えて測定する必要があることが分かりました。 一方、1cm角のサイコロの置き方を図に示したが、過大・過小評価率は7%に収まりました。この程度の刻み方で、緊急時の測定としては十分であることが分りました。








なお、当該研究申請後に、東大RICの桧垣氏(本学非常勤講師)に137Csの測定をお願いしました。。 申請当初は、食材に含まれる137Csを使用予定でしたが、既にある程度高い放射能の食材を入手できず、 従って本研究には137Cs標準試料を購入しなければならなくなりました。 本学では137Csの使用許可を取得していないため、許可取得済みの東大RICにご協力いただきました。



研究発表

  • 日本放射線安全管理学会, 第11回学術大会(平成24年12月4〜6日, 大阪大学)
    「ゲルマニウム半導体検出器測定時における試料の不均一性が結果に及ぼす影響」

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