プロジェクト
【印象派物理学に基づく表面張力現象と物質強靭性のシミュレーション(奥村 剛・義永綾子・横田万里亜)】
申請者のグループは表面張力現象と物質の強靭性について印象派物理学という独特の手法で研究を行ってきています。 本研究では、一連の研究をさらに発展させました。 具体的には、滴の融合をはじめとする表面張力を駆動力とする現象および弾塑性体や複合材料を模した系の強靭性を破壊力学的観点から理解するために、 印象派物理学に基づいたシンプルなモデルを構築してシミュレーションを行い、シンプルで明確な自然法則の確立をすすめました。 擬2次元での滴の融合については、最近、発表した動力学のクロスオーバーの中間領域に、さらに新しいスケーリング領域があることモデルを構築して確立しつつあります。 さらに、滴の融合の初期に関する数値シミュレーションを開始しました。 また、弾塑性体のシンプルネットワークモデルに対する数値シミュレーションを行い、スケーリング法則を数値的に確立しました。
(1)滴の融合の動力学におけるマルチクロスオーバー
申請者らは擬2次元のセルの中で液中液滴の融合を捉え、そのダイナミクスの初期と後期に明確なスケーリング法則を確立しました。 本研究では、初期と後期に中間領域があり、その部分も理論と実験の突合せからシンプルに説明できることを示しつつあります。 印象派物理学の精神に基づき、実験と理論によるシミュレーションを交互に行いながら新しいスケーリング領域を探り当てていきました。 同様にしてテクスチャー表面への浸透現象、粉粒体の動力学についてもスケーリング法則の発見を目指して研究を進めた。
(2)液滴融合の数値シミュレーション
申請者らは、外部の研究者の協力を得て、液滴の融合の数値シミュレーションの研究を開始しました。 融合の初期の実験と理論の不一致というホットなトピックスの終結を目指して研究をすすめ予備的な計算結果を得つつあります。
(3)弾塑性体シンプルネットワークモデルの数値シミュレーション
申請者らは、シンプルなネットワークの数値シミュレーションを通してクモの巣の丈夫さを明かに示すなどしてきています。 このノウハウを生かし、最近、物質の丈夫さの理解に重要な「応力集中」という現象に関するスケーリング法則を非線形モデルにおいて 数値計算から導き出すことに成功しています。 本研究では、この方法を踏襲して、現実の物質に良くみられる弾塑性型のモデルにおけるスケーリング法則の確立を目指しました。 その結果、興味深いスケーリング法則が数値計算によって確かめられました。